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朝日新聞
やさしい選挙

第51回衆議院議員選挙 選挙公報の音声読み上げ対応PDF・音声ファイル調査結果

第51回衆議院議員選挙 選挙公報の音声読み上げソフト対応版PDFを各都道府県選挙管理委員会のウェブサイトからダウンロードして、音声読み上げソフトへの対応状況を調査しました。また、音声ファイルの掲載(選挙公報を音声で読み上げたオーディオファイルの掲載状況)についても調査しました。

背景

2019年から、「読み上げ対応」のPDFが公開されるようになりました。ただ、提出は候補者の任意で、義務ではないこと、実際にスクリーンリーダーで読み上げても、読み上げ順などが適切に指定されていないため、うまく読み上げられず、意味が理解できるものがとても少ないことが私たちのこれまでの調査で分かりました。

これについては、いくつかの理由が考えられます。

  • PDFをスクリーンリーダーで読み上げられるように設定する方法が知られていない
  • 選挙管理委員会から立候補者へ渡している書類の「音声読み上げ対応PDF」の説明では「アウトライン化していないものを提出」以上のことが書かれていない
  • 実際に陣営や立候補者がデータをスクリーンリーダーで読み上げて確認していない

また、今回のような日程に余裕のない選挙では、点字版、拡大文字版、音声CDなど「選挙のお知らせ」が届くのに時間がかかるという問題もありました。

参考情報

調査方法

  • 都道府県・選挙管理委員会のウェブサイトから、選挙期間中に「音声読み上げ対応版PDF」(掲示のあった候補者、政党のみ)をすべてダウンロードして、
  • QPDFコマンドを使ってすべてのPDFが構造化されているかどうか(StructTreeRoot ※ が含まれるかどうか)を調べた後に、
  • StructTreeRootを含むすべてのPDFを Adobe Acrobat Proで開いて中身を確認しました。

※「StructTreeRoot(構造を示す内部的なマーク)」が含まれていても、読み上げ順などについての設定がされていないものについては除外しました。
※ 画像の代替テキストの指定が不足していたり、一部分読み上げに適切に対応できていない箇所があるものもありましたが、それらについては音声読み上げ対応PDFとしてカウントしました。
※ 小選挙区福井県については、PDFではなく、テキストをひらがなにしたものを HTMLで掲載していました。
※ 対応状況がわかりにくいものについては、実際にスクリーンリーダーで読み上げて確認を行いました。

読み上げ順の指定などに配慮されたPDFは全体のわずか5%

音声読み上げソフト対応版として掲載されている PDFファイルにタグ付け、読み上げ順指定がされているかどうかを調べました。読み上げ順が設定されているものはわずかに64ファイル(福井県のHTMLをあわせても70)で全1231(1119名の小選挙区立候補者、112比例代表延べ政党数)に対して5%と低い数字になりました。

対応しているPDFのうち、7名分のPDFは「画像を1点配置して、その中に読み上げ用のテキストを全て含める」形で対応していました。カーソル移動できない部分は不便ですが、固有名詞をひらがなで記載するなど、読み上げて意味のわかるPDFになるよう工夫しているものもありました。

注記:「タグ付け」とは、PDFのデータに見出しや段落などの構造をマークして、読み上げ順を指定したり、画像の代替テキストを指定する方法のことです。

(全体)音声読み上げ対応版PDFの状況のグラフ(クリックで拡大)

読み上げ順指定ありPDF HTML(福井県) 読み上げ順指定なしPDF 音声対応版PDF未提出 選挙公報なし
64(5%) 6(0%) 885(67%) 360(27%) 9(1%)

PDFの音声読み上げ順を指定したり、代替テキストを指定してスクリーンリーダーで適切に読み上げられるようにする方法については、以下のページで確認いただけます。

音声ファイルの掲載は7都道府県と比例代表の南関東

岩手県、東京都、神奈川県、静岡県、三重県、長崎県、鹿児島県のウェブサイトには読み上げられた選挙公報が録音された音声ファイル(オーディオファイル)が掲載されていました(原稿未提出の一部候補者を除く)。音声ファイルはPDFを音声読み上げソフトで読み上げたものではなく、別に録音されたものです。この7都道府県は前回の参議院議員選挙の時にも音声ファイルを掲載していました。

比例代表では、南関東の音声読み上げファイルが神奈川県のウェブサイトに掲載されていました(未掲載の政党もありました)。

音声ファイルがあったのは、全1231(1119名の小選挙区立候補者、112比例代表延べ政党数)に対して25%となります。

(全体)音声読み上げファイルの掲載状況のグラフ(クリックで拡大)

音声ファイル掲載あり 音声ファイル掲載なし
307(25%) 924(75%)

福井県はひらがなで書かれたテキストをHTMLで提供

福井県の小選挙区(6名)の音声読み上げを利用する人向けの情報提供は、PDFではなく、HTMLでした。原稿はひらがなで書かれており、例えば以下のようになっています。

ほくりく しんかんせん おばま るーとの そーき 

けっていと にっぽんの しんかんせん ぎじゅつを せかいに 

ひろげます

福井県の情報提供は点字のルールに近い

助詞の置き換えルールや分かち書きが入っているところ、長音の使い方などは、点字のルールに近いものではないかと思います。

  • 「は」→「わ」 (例 : 私は=わたしわ)
  • 「へ」→「え」 (例 : 学校へ=がっこうえ)
  • 「を」→「お」 (例 : 本を読む=ほんお よむ)

情報保障におけるその他の問題点

音声読み上げ対応版と音声ファイルの掲載が選挙公報の公開よりも遅れる問題

全体的に、選挙公報(音声読み上げソフト非対応版)が先に掲載されてから、音声読み上げ対応版PDFや音声ファイルが掲載される傾向にありました。点字版、拡大文字版、音声CDなど「選挙のお知らせ」が届くのに時間がかかるのと同じく、ホームページにおいても情報提供のタイミングにおいて不公平が生じています。

以下は、ある都道府県のウェブサイトに音声読み上げ対応版のページが公開される前に掲載されていたテキストです。

「選挙公報に関して、音声機能をご利用になる場合はこちら」と書かれているが、リンクになっていない(クリックで拡大)

スクリーンリーダーのユーザーは、存在しないリンクを探してしまうかもしれません。このような場合は、「現在準備中です」「○月○日に公開予定です」などと記載するのが親切であると考えます。そもそも、このリンクは奥まったところに小さく存在していて、探しにくいと感じるユーザーも多いと思います。

選挙区ごとに1つのファイルになっており、個別の候補者のPDFが別になっていない問題

多くの選挙公報PDFは印刷用データを流用して掲載していると思われます。東京都と千葉県以外は、小選挙区ごとにすべての候補者のデータが一つのPDFになっていました。AIなどを用いて内容を読み取る際には、候補者ごとに単独のファイルになっていた方が利用しやすいと思われます。

音で聞いた時に理解しにくい(「やさしい日本語」になっていない)問題

音声で聴いた時に違和感のあるテキストがいくつかありました。例えば「ないかいし」(内科医師)などは、音で聞いた時に、なんと言っているのか理解しづらかったと感じました。「漢語より和語を使う」など、やさしい日本語の考え方を取り入れることで、音で聞いた時にも情報が伝わりやすくなります。

また、候補者名を(投票用紙に記載しやすいようにするためと思われます)すべて(または一部を)「ひらなが」にしている候補者が多く見られました。「ひらがな」で書かれた候補者名をそのまま音声で読み上げると、不自然なイントネーションになったり、不自然なところで切れたりすることも目立ちました。

選挙が終わるとホームページからデータが削除される自治体が多い問題

選挙が終了すると、都道府県・選挙管理委員会のホームページから選挙公報のPDF、音声読み上げ対応版PDF、音声ファイルなどが削除されるところが多くあります(残しているところもあります)。これには、以下のような問題があると考えます。

  • 選挙後の公約・内容についての検証ができない
  • 選挙後の結果の分析に、選挙公報が利用できない
  • 次回の選挙の際に、候補者の過去の公約や取り組みの検証ができない

「やさしい選挙」について

「やさしい選挙」で解決したかったこと

これらの問題は、今回の選挙に限らず存在していました。しかし今回、公示から投票まで、非常に短い期間に設定されたことで、さらに情報格差が広がる懸念がありました。「やさしい選挙」では、以下のことを行うことで、この問題の解決に取り組みました。

  • 選挙公報を集約することで、障害者だけではなく、選挙公報が届かないなどの不便を感じている人にわかりやすく選挙の情報を届けること
  • 音声が公開されている7都道府県ではその音声を、音声が公開されていないその他の小選挙区のすべての候補者(選挙公報未提出の候補者を除く)の選挙公報は音声化して、音で聞くことができるようにすること
  • 選挙が終了しても、アーカイブを保存して、あとから検証ができるようにすること
  • 選挙に関連するニュースや投票のやり方などについて、日本語が不得意な人などにもわかりやすいように「やさしい日本語」で届けること

最終的に公示からわずか7日間という短期間で、827名分の音声ファイルを作成し、掲載しました(10ファイルについては公開後に岩手県サイトで音声の公開があったため、差し替えました)。選挙期間中は各都道府県・選挙管理委員会のサイトのデータへリンクしていましたが、選挙終了後の2026年2月10日にアーカイブ化しました(取得・保存済みのデータへのリンクに切り替えました)。これにより、データが削除されてしまってあとから検証ができない問題を解決します。

音声化にあたっての考え方や音声化の方法などは、「このサイトについて」にまとめていますので、興味のある人はご覧ください。

ウェブアクセシビリティについて

「やさしい選挙」では、ウェブアクセシビリティについてもさまざまな工夫を行いました。

  • ふりがな、わかち書きのON/OFFの切り替え
  • トップページの地図部分など、背景色と文字色のコントラスト比を確保
  • キーボードのみでも操作を可能に、フォーカスリングなどをわかりやすく
  • 地図のリンク以外に各都道府県へのテキストリンクを掲載(SVG内のボタンが一部スクリーンリーダーで使えないとの指摘をいただき改良しました)
  • 横長の表をスワイプ(スマートフォン)またはスクロールバーで操作でき、キーボードでも操作できるように
  • 「候補者の名前からさがす」機能では、漢字でも、ひらがなでも、姓名のあいだのスペース、あり、なしのいずれでもヒットするように、など

利用者の声

「やさしい選挙」の公開後、メールやSNSなどでさまざまな感想をいただきました。

  • 必要な人に届きますように。
  • 1週間で800名以上の情報を音声化するのはとても大変な作業だったと想像します。
  • 今回のように選挙公報がギリギリまで届かないような場合、見やすく整理されたこのサイトは万人ばんにんに便利。
  • とても使いやすかった。(複数の視覚障害当事者のかたから)
  • うまく読めるか読めないかわからないPDFよりも、ボタンひとつで音声が聞けるのはとても良いと感じます。
  • 括弧の前後に少し間を空けて読み上げていましたが、個人の感想ですが「カッコ」と読んでくれた方がイメージがしやすいように思います。
  • いくつかの音声を聞いて見たが、読みにくいPDFが多い中、とてもわかりやすかった。

アルファサードについて

アルファサードは設⽴以来、⼀貫してウェブアクセシビリティ技術に取り組んでいます。

PowerCMS」「PowerCMS X」の2つの CMS 製品を主軸に、やさしい日本語への言い換えを支援する「伝えるウェブ」、AI による動画字幕生成の「ジマクル」などのサービスがあり、ウェブサイトの受託開発も手がけています。

アルファサードはこれからも「やさしい選挙」などの取り組みを通じて、年齢や障害、利用環境にかかわらず、誰もが情報にアクセスできる社会の実現を目指します。今後も、国政選挙・地方選挙等において選挙のアクセシビリティ向上に向けた取り組みを継続していく予定です。


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